刀装具【鍔・縁頭・目貫・小柄】 鉄地古池に蛙図鐔 - Tetsu ji Furu-ike ni Kaeru -

- 縦/height7.5cm
- 横/width7.0cm
- 厚み/thickness0.5cm
- 重量/weight132g
- 正価/price売却済-Sold-
なんとも云えぬ味わい深い鍔である。鉄地を水面に仕立て、小高い部分は水面から出ている石であろうか。金象嵌された蔦の葉が景色に繊細な色を添える。据文象嵌された蛙は赤銅で、ぬめるような肌の質感が上手く表現されている。この鐔を見て最初に浮かんだのが、芭蕉の句「古池や、蛙飛び込む水の音」であった。
蕉風開眼の句と云われるこの句を詠んだ三年後に彼は陸奥みちのく「おくの細道」へと旅立ったのである。
彼は蛙が飛び込むところも古池も見てはいない。ただその音から心象風景を吟じたのである。この鐔には芭蕉の目には映っていなかった古池と蛙が描き出されている。一瞬を永遠に閉じ込めたそんな鐔に思える。
太宰治が芭蕉の句について言及した「津軽」の一節を紹介したい。
「私は傘さして、雨の庭をひとりで眺めて歩いた。一本一草も変わっていない感じであった。こうして、古い家をそのまま保持している兄の努力も並たいていではなかろうと察した。池のほとりに立っていたら、チャポリと小さい音がした。見ると、蛙が飛び込んだのである。つまらない、あさはかな音である。とたんに私は、あの、芭蕉翁の古池の句を理解できた。-中略- 月も雪も花もない。風流もない。ただ、まづしいものの、まづしい命だけだ。当時の風流宗匠たちが、この句に愕然としたわけも、それでよくわかる。」
太宰治が芭蕉の句について言及した「津軽」の一節を紹介したい。
「私は傘さして、雨の庭をひとりで眺めて歩いた。一本一草も変わっていない感じであった。こうして、古い家をそのまま保持している兄の努力も並たいていではなかろうと察した。池のほとりに立っていたら、チャポリと小さい音がした。見ると、蛙が飛び込んだのである。つまらない、あさはかな音である。とたんに私は、あの、芭蕉翁の古池の句を理解できた。-中略- 月も雪も花もない。風流もない。ただ、まづしいものの、まづしい命だけだ。当時の風流宗匠たちが、この句に愕然としたわけも、それでよくわかる。」