刀装具【鐔・縁頭・目貫・小柄】 真鍮地狗児戯鮑貝図鐔 - Shinchu ji Inukoro Awabi zu -
- 縦/height5.8cm
- 横/width4.7cm
- 厚み/thickness0.45cm
- 重量/weight52g
- 正価/price95,000円
真鍮の地鉄を丸彫り透かしに仕立てた、なんとも愛らしい鐔である。鮑の殻に紐を結び作ったおもちゃで遊んでいる斑の子犬。黒い斑は赤銅を嵌め込み研ぎ出して、子犬の目と首輪、貝の縁に施された金の色絵象嵌がひときわ輝きを放つ。アワビの殻も等角螺旋を描き、鮑の穴にくくり付けられた紐はくるくると螺旋を描く。左後足をちぢめて、右後足でぐっと紐を踏みつけ、紐にガジガジ噛みついている子犬の姿は、なんとも一生懸命で、見ているこちらの微笑みを誘う。
仔犬が遊んでいるのは鮑の貝殻である。
平安時代に書かれた日本最古の医術書と云われている医心方。鮑の説明の最後に下記の記述がある。
祝い事、贈答品に添えられる熨斗は、元来鮑を平たく伸ばして干したものである。伊勢神宮には現在でもこの熨斗鮑が毎年奉納されている。祝いの席、儀式などに欠かせない鮑は、戦国時代になると、戦まえに気持ちを鼓舞し、生きながらえることを願う縁起ものとして、三献の儀(式三献)(酒杯を加えた四方膳とも)が行われるようになる。総大将が打鮑・勝栗・昆布の三品を口にし、酒杯を三度口にするのである。敵を討ち伸ばし、勝って、喜ぶのである。また、戦場では保存食として重宝したという。
犬は多産で出産も軽いことから、安産と子ども無病息災を、犬の危険を察知する能力から、盗難、火災除け。犬の遠吠えが魔を祓うと魔除けとされる。
奈良にある光明皇后ゆかりの法華寺にはお守り犬と呼ばれる泥製の手捻りで作られた可愛らしい犬のお守りがある。天平の時代一千座護摩供養を行い、護摩堂の灰と清浄な土に混ぜて皇后御手ずから作られたとされる。衆生の病苦、厄除け、安産を願い結縁の者に授けられたのが始まりといわれている。
平安時代、穢れや災いを祓うために置かれた宮中の狛犬が始まりだとも云われている犬筥。お守り犬が元とも云われているが、犬筥は雌雄一対阿吽の姿で産室に置かれ、魔除けや安産のお守りとされてきた。
犬の「安産・魔除け」鮑の「長寿・縁を伸ばす」鮑に付けられた緒には「物事が長く続くこと、また続いているもの。これが転じて玉(魂)をつなぐもの、命、生命、玉の緒の意」とある。子孫繁栄を願う文様でもあろう本作。
江戸中期から後期に活躍した円山応挙らの描いた可愛らしい犬ころの絵。そんな愛らしさが鐔全体から漂う逸品である。
仔犬が遊んでいるのは鮑の貝殻である。
平安時代に書かれた日本最古の医術書と云われている医心方。鮑の説明の最後に下記の記述がある。
石决明 耳秦皇之世不死之薬覔東海者豈謂於斯歟 和名 阿波比
「秦の始皇帝の時代、東海にて不死の薬を探す者がいたが、石决明がこれであったと聞いたことがある。和名 阿波比」(意訳)
医心方だけではなく、本草和名にも不死の薬21種に石決明(附石生海中)の一文を見ることができ、鮑が不老長寿の妙薬とされていたことがわかる。鮑の内側にある真珠層は薄く板状に削がれ、螺鈿細工の材料となり、稀に取れる鮑真珠は鮑玉、鮑白珠として珍重された。祝い事、贈答品に添えられる熨斗は、元来鮑を平たく伸ばして干したものである。伊勢神宮には現在でもこの熨斗鮑が毎年奉納されている。祝いの席、儀式などに欠かせない鮑は、戦国時代になると、戦まえに気持ちを鼓舞し、生きながらえることを願う縁起ものとして、三献の儀(式三献)(酒杯を加えた四方膳とも)が行われるようになる。総大将が打鮑・勝栗・昆布の三品を口にし、酒杯を三度口にするのである。敵を討ち伸ばし、勝って、喜ぶのである。また、戦場では保存食として重宝したという。
犬は多産で出産も軽いことから、安産と子ども無病息災を、犬の危険を察知する能力から、盗難、火災除け。犬の遠吠えが魔を祓うと魔除けとされる。
奈良にある光明皇后ゆかりの法華寺にはお守り犬と呼ばれる泥製の手捻りで作られた可愛らしい犬のお守りがある。天平の時代一千座護摩供養を行い、護摩堂の灰と清浄な土に混ぜて皇后御手ずから作られたとされる。衆生の病苦、厄除け、安産を願い結縁の者に授けられたのが始まりといわれている。
平安時代、穢れや災いを祓うために置かれた宮中の狛犬が始まりだとも云われている犬筥。お守り犬が元とも云われているが、犬筥は雌雄一対阿吽の姿で産室に置かれ、魔除けや安産のお守りとされてきた。
犬の「安産・魔除け」鮑の「長寿・縁を伸ばす」鮑に付けられた緒には「物事が長く続くこと、また続いているもの。これが転じて玉(魂)をつなぐもの、命、生命、玉の緒の意」とある。子孫繁栄を願う文様でもあろう本作。
江戸中期から後期に活躍した円山応挙らの描いた可愛らしい犬ころの絵。そんな愛らしさが鐔全体から漂う逸品である。