刀装具【鐔・縁頭・目貫・小柄】 鉄地武者図透鐔 木曽義仲・巴御前『藻柄子入道宗典製』
- Tetsu ji Musha zu sukashiTsuba Mei/Mogarashi nyudo Soten sei-


- 縦/height7.6cm
- 横/width7.4cm
- 厚み/thickness0.45cm
- 重量/weight100g
- 正価/price売却済-Sold-
平家物語 巻九『木曽最後』
元和九年版より抜粋
木曽は信濃より出しより巴款冬とて、二人の美女を具せられたり。款冬は勞り有りて都に留まりぬ。
中にも巴は色白く髪長く、容顔まことに美麗也。究意の荒馬乗りの悪所落とし。弓矢打物取っては如何なる鬼にも逢うと云う。一人当千の兵也。されば軍と云時は實よき鎧着せ強弓大太刀持せて一方の大将に被向けるに度々の高名肩を雙る者なしざれば、今度も多の者落失せ討たれける中に七騎が中までも、巴は討れざりけり。
中にも巴は色白く髪長く、容顔まことに美麗也。究意の荒馬乗りの悪所落とし。弓矢打物取っては如何なる鬼にも逢うと云う。一人当千の兵也。されば軍と云時は實よき鎧着せ強弓大太刀持せて一方の大将に被向けるに度々の高名肩を雙る者なしざれば、今度も多の者落失せ討たれける中に七騎が中までも、巴は討れざりけり。
木曽義仲は信濃から巴、山吹という二人の美女を伴った。山吹は病のため都に留まった。
巴は色が白く、髪は長く、まことに美しい顔立ちをしていた。最高の荒馬乗りで険しい道をものともせず、武器を取ればいかなる鬼でも相手にしようという、一人当千の武者である。(木曽殿は)合戦となると実良き鎧を着せ、強弓、大太刀を持たせ一方の大将としてさし向け、度々の武功は肩を並べる者もいないほどで、今度も多くの者が討たれる中、七騎になるまで巴は討たれなかった。
巴は色が白く、髪は長く、まことに美しい顔立ちをしていた。最高の荒馬乗りで険しい道をものともせず、武器を取ればいかなる鬼でも相手にしようという、一人当千の武者である。(木曽殿は)合戦となると実良き鎧を着せ、強弓、大太刀を持たせ一方の大将としてさし向け、度々の武功は肩を並べる者もいないほどで、今度も多くの者が討たれる中、七騎になるまで巴は討たれなかった。
主従五騎にぞ成にける。五騎が中迄も巴は討たれざりけり。木曽殿、巴を召して己は女なれば是よりとうとう何地へも落ちゆけ。義仲は討死をせんずる也。若し人手に懸からずば、自害をせんずれば、義仲が最後の軍に女を具したりなど云れん事、可口惜と宜へ共、猶落ちも行かざりけるが、餘りに強う被云奉つて、哀れ好からう敵の出で来よかし。木曽殿に、最期の軍して見せ奉らんとて、扣て敵をまつ處に、爰に武藏の國の住人、御田の八郎師重と云ふ大力の剛の者、三十騎計りで出来る。巴、其の中へ破て入り、先づ御田の八郎に押ならべ、無手と組んで引落し、我が乗たりける鞍の前輪に推しつけて、些も不動、頸子ぢ切て捨てにけり。其の後物の具脱棄て、東國の方へぞ落行きける。
主従五騎になってしまった。五騎のなかまで巴は討たれずにいた。木曽殿は、巴を近くに呼び寄せて「おまえは女なればここを最後にどこまでも逃げよ。義仲は討死いたす。もし人手にかからねば、自害を為すのだから、義仲が最後の戦いに女を連れていたなど云われたら口惜しいではないか」とおっしゃれども、なお逃げることはなかった。ただ、あまりに強く言われるので「ああ、よい敵が出てくれば木曽殿に最後の戦いを見せて差し上げるのに」と敵を待ち留まっているところへ、武蔵国住人御田八郎師重という大力の豪傑が三十騎ばかり出てきた。巴、その中へ駆けいり、まず御田八郎に馬を押し並べ、むんずと組んで引き落とし、自らの乗った馬の鞍の前輪に押しつけ、いささかの身動きもさせずに首をねじ切り捨てやった。その後、甲冑を脱ぎ捨てて、東国の方へと去って行った。
平家物語、木曽最期の段よりの抜粋であるが、本作、義仲が巴に逃げよと声をかけている場面であろうか。見事な大太刀を佩き義仲を見上げる巴の姿はなんとはなしに美しく見える。静かに耳を傾けている巴だが、その背後には馬の尾をつかみ刀を振りかぶる武者の姿がある。もちろん、巴は一瞥の後にこの武者を一太刀で切り捨てるのだろう。そして何事もなかったように義仲の話の続きを神妙な面持ちで聞くのだろうと、そんな一人当千の女傑、巴の姿が想像に難くない一枚である。鉄地を肉彫地透で華やかな色絵象嵌を、耳には赤銅覆輪を施し、個々の人物が生き生きと造り込まれている。合戦の激しさの「動」と、木曽義仲、巴の間に見える「静」が見事に表現された一枚の鐔。おすすめの逸品。